デリケートゾーンがかゆい!再発する膣カンジダに悩まされる女性は少なくありません
「あー、かゆい!!ホント、勘弁して…」―。時計の針がそろそろ深夜零時を指そうとする頃、都内の外資系証券会社で働く由佳さん(仮名:36歳)はそそくさとトイレに向かいました。
彼女はまず石鹸で手を洗ってから、個室の扉を閉めると、スカートと下着を下ろして、携帯用のポシェットから取り出した錠剤を膣に挿入しました。錠剤の名前は「フェミニーナ腟カンジダ錠」―。そう、由佳さんは再発性の膣カンジダに悩まされていたのです。
外資系金融機関の例に漏れず、由佳さんの証券会社も早朝から夜遅くまで仕事がビッシリと詰まっており、帰宅が1時を過ぎることも珍しくはありません。「外務省勤務時代の雅子様は、午前2時の帰宅で"今日は早いのね"とご両親から冗談交じりで言われたそうだから、このくらいは大したことはないわ」と20代の頃は相当無理な働き方をしてきました。
そのツケなのか、過労、睡眠不足、仕事のストレス、偏った食生活などの要素が重なり、3年前には「胃・十二指腸潰瘍」、昨年には「パニック障害」を発症しました。ほぼ同時期に発症し、今も悩まされているのが、疲れが溜まってくると何度も再発する「膣カンジダ」です。
膣カンジダは、真菌(カビ)の一種であるカンジダ菌が膣に感染することで発症するもので、膣のかゆみや灼熱感、性交痛、おりものの異常(ヨーグルト、カッテージチーズ、酒粕のような白くボロボロしたおりもの)、排尿痛、性交痛などデリケートゾーンを中心にさまざまなな不快な症状が現れます。
なお、膣分泌液を採取してカンジダ菌が確認されても、不快な症状がなければ治療の必要はなく、膣カンジダとは診断されません。おりものの症状や、「膣がかゆい」「セックスの挿入時に痛い」などの不快な症状が伴ってはじめて膣カンジダと診断され、治療の対象となります。
勤務時間に由佳さんを悩ませているのが、膣や膣周辺の"掻き毟りたくなるような"激しいかゆみです。かゆい場所が場所だけに、仕事中にパンツの中に手を入れてボリボリと掻くなんてことはできませんし、この苦しみを理解してくれる女性の同僚や部下もいません。
しかし、膣カンジダに悩まされている女性は非常に多く、女性の5人に1人は膣カンジダを最低1回は経験しているとされています。感染率がこれほど高いのには理由があります。それは、健康な人でも皮膚や口の中、消化管、膣の中にカンジダ菌は存在しているためです。
体が健康な状態である限り、カンジダ菌は害を及ぼさないのですが、由佳さんのように過労、睡眠不足、ストレスなどの要因が複数重なったり、病気の治療で抗生物質を服用したり、生理前のホルモンバランスの変化などによって免疫力が低下してしまうと、カンジダ菌の活動が活発となり、不快な症状を引き起こしてしまうのです。
そして、膣カンジダが厄介な感染症とされるのは、性器ヘルペスなどと同じように再発を繰り返すという点にあります。初めての発症も再発もきっかけとなる要因は同じです。
つまり、過労、睡眠不足、ストレス、食生活の乱れなどの生活習慣を改善しない限り、再発のリスクは誰にでもあるということです。しかし、社会人ともなれば、仕事の関係上、これらを自分の力だけで改善することは容易ではないはずです。
ただし、ご自身で簡単に実践できる膣カンジダの対策もあります。カンジダ菌は温かく湿った場所が大好きですので、きつい下着やパンスト、ジーンズなどの着用は避けて、通気性に富んだコットンの下着、ゆったりとした服を着るようにしましょう。
また、入浴後、デリケートゾーンは清潔なバスタオルで優しく拭いて、完全に乾かしてから下着を着用するようにします。生理中以外でナプキンを使う場合は、こまめに交換するように心掛けましょう。特に夏場は、デリケートゾーンが湿った状態になりやすいので、注意が必要です。
膣カンジダで婦人科や性病科を受診すると、まず膣の中を洗浄して清潔な状態にしてから、治療薬としてエンペシド、フロリード、アデスタン、オキナゾールといった膣錠や軟膏タイプの抗真菌剤が処方されます。通常、1〜2週間もすれば症状は治まります。
再発した膣カンジダの患者さんは市販薬での治療が可能になりました
再発した膣カンジダの患者さんに限り、ドラッグストアや薬局で市販されている膣錠(膣から挿入する薬)やクリームを購入することで、婦人科を受診しなくても自分で治療ができるようになりました。
先述の由佳さんが使用していた「フェミニーナ膣カンジダ錠(小林製薬)」が最も有名なお薬で、その他、「メディトリート(大正製薬)」、「オキナゾールL100(田辺三菱製薬)」、「エンペシドL(佐藤製薬)」などが販売されています。
いずれの薬も優れた抗真菌作用を持つオキシコナゾール硝酸塩、ミコナゾール硝酸塩、クロトリマゾールなどを有効成分として配合しており、膣や外陰部の我慢できないかゆみ、灼熱感、おりものの異常といった膣カンジダの不快な症状を改善します。
注意したいのは、医療機関で膣カンジダと診断されたことがない人が、自己判断でこれらの薬を購入するのはNGだということです。というのも、膣のかゆみやおりものの異常が現れる病気には、膣カンジダ以外にも、膣トリコモナス、細菌性腟症などがあり、まず婦人科で検査をして病名をハッキリさせる必要があるからです。
ドラッグストアで膣カンジダの市販薬を購入する際には、使用上の注意に関する薬剤師による指導を受け、質問(過去の膣カンジダの経験、医薬品による副作用経験、服用中の薬、治療中の病気の有無など)に答える必要があります。ネットで市販薬を購入する際にも、同様の質問に対してメールで薬剤師に返信する必要があります。
膣内のカンジダ菌を殺菌するためには膣錠を6日間連続で使用する必要がありますが、膣錠の使用期間中に生理が重なる事態も十分考えられます。膣カンジダの治療中に生理がやってくると、膣錠が経血で流れ出てしまうため、膣錠による治療は一時中断となります。
生理時はカンジダ菌も経血と一緒に流れ出るため、一時的に膣のかゆみ、灼熱感などの不快な症状も治まります。この時に「もう治った」と勘違いして、自己判断で薬の使用を止める人がいます。生理が終わればカンジダ菌が再び繁殖し、当然、かゆみなどの症状も戻ってきますので、薬の使用は必ず同封されている添付文書の指示通りに行いましょう。
カンジダ菌(真菌)はセックスで男性のペニスにも感染しますが、入浴時にシャワーで簡単に洗い流されるのでそれほど心配ありません。ただし、ペニスが洗いにくい仮性包茎や真正包茎の男性は皮の内側で菌が繁殖する恐れがあります。
また男性のカンジダは女性に比べて症状が現れにくいという特徴もあるため、本人が知らないまま彼女や奥さんにカンジダを移していることもあります。何度も膣カンジダが再発する女性の方は、一度パートナーの男性にも検査を受けてもらうと安心でしょう。
下着やナプキンによるムレがかゆみの原因の場合、デリケートゾーン専用の軟膏が効果的です
女性の体の悩みで常に上位にランクインされる「デリケートゾーンがかゆい!」という切実な声。多くの女性が一度は経験したことのある悩みですが、デリケートゾーンという場所のため、恥ずかしくて友人に相談できたかったり、婦人科に行きづらいという人も多く、症状を悪化させてしまうこともしばしばです。
一口にデリケートゾーンがかゆいといっても、「かゆみ」には3つのタイプがあります。一つ目は、「空気に触れているデリケートゾーンの外側の部分がかゆい」場合です。これは下着やナプキンによるムレや擦れ、汗や尿などが原因で皮膚炎(かぶれ)を起こしている可能性が高くなります。フェミニーナ軟膏S(小林製薬)やメンソレータムフレディメディカルクリーム(ロート製薬)といったテレビCMでお馴染みの「デリケートゾーン専用の軟膏」はここに効くお薬です。
下着によるムレ、汗などによるかゆみは一時的なものですので、ピッタリしたパンスト、ジーンズなどは避けたり、通気性のよい下着などを身につけたり、こまめにナプキンを交換するなどして、デリケートゾーンを清潔な状態に保つことができれば、かゆみは自然に治まります。
二つ目のかゆみは、「いつも湿っているデリケートゾーンの内側の部分がかゆい」場合です。このタイプは、上述した1つ目と同じ原因のものと、細菌・真菌(カンジダ)・ウイルス(ヘルペス)・原虫(トリコモナス)などの感染症が原因のものとがあります。かゆみ止めを二日塗っても症状の改善がないときは、感染症が疑われます。
細菌には抗生物質、カンジダには抗真菌薬、ウイルスには抗ウイルス薬が有効ですが、どれに感染しているかは、婦人科で検査を受けないとわかりません。強いかゆみの場合は、カンジダ菌に感染していることが多いので、抗真菌薬を数日間試してみて、それでも改善しない場合は、婦人科を受診しましょう。
そして最後、3つ目は「膣の中がかゆい」場合です。原因はほぼ間違いなく感染症なので、すぐに婦人科へ行きましょう。再発性の膣カンジダ症と診断された場合に限り、薬局でフェミニーナ膣カンジダ錠(小林製薬)、メディトリート(大正製薬)、メンソレータムフレディCC膣錠(ロート製薬)、オキナゾール(田辺三菱製薬)などを購入することができます。ただし、購入の際には薬剤師の説明を受けることが義務付けられています。
デリケートゾーンのかゆみ止めを使う場合は、ステロイドが入っているかどうかを確認しましょう。下着のゴム部分などによる接触性の皮膚炎を原因とするかゆみには、ステロイド入りのかゆみ止めが早くかゆみを抑えますが、カンジダ菌にはステロイド剤は効果がなく、むしろ症状を悪化させてしまうことがあるので、菌感染が疑われる場合は使用を控えましょう。ちなみに「デリケートゾーン専用の軟膏」には、基本的にステロイドは入っていません。
かゆいからといって薬をたくさん塗って、ずっとそのままにしていると、薬と汚れが混じって症状が悪化することがあります。1日1回は薬ごときれいに洗い流しましょう。また1つの薬を2日間使用しても改善しないときは薬があっていない可能性がありますので、医師に相談しましょう。